茨城県つくば市手代木にある歯科医院です
予防歯科を中心として 歯とお口の健康を
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院長コラム・Vol.3
つくばヘルスケア歯科クリニック
院長・千ヶ崎 乙文書き下ろしコラムです
歯科医療に関する情報をご紹介します

院長コラム Vol.3 2013年 12月 3日

CTの導入

ライブ画像によるう蝕診断・虫歯診断の新兵器 DiagnoCam(KaVo社)

導入の経緯

 当医院では、今までインプラント治療時は近隣の提携医院に顔面部のCT撮影を依頼し、インプラント・シミュレーションソフトによって、診断・治療を行ってきました。自院でCT撮影ができるようにすることは、その都度、提携病院に撮影に行っていただく手間がなくなり、患者さんにとって便利になります。CTを導入した場合、それ以外にどんなメリットがあるでしょうか。
外科治療の際に、埋伏している歯の根の曲がり具合がわかると抜歯時のリスクも低下しますし、手術の効率もアップします。神経の治療をする際に、根の分かれ方などの情報が3次元的にわかると、当然、その根があるはずと探索するわけですから、根の治療の効率も精度もアップし、治療結果が良くなるでしょう。歯周病で骨の吸収具合を把握できれば、手術が必要だとか、抜歯せざるを得ない状況であることを患者さんご自身と共有できるでしょう。根が割れている場合も把握できるでしょうし、根の先の膿みの病気の大きさなどの把握も簡単にできます。

 この2ヶ月間、凡そすべてのCT取り扱いメーカーのデモを経験し、それぞれの長所、短所を細密に検討してきました。また、実機を使用されている友人の先生方に直接感想を聞くこともできました。当医院のレントゲン室のスペース、被爆線量が少なくかつ画質レベルが高いこと、現在使用しているインプラント・シミュレーションソフト(iCat LANDMAKER)との相関があることを考慮し、カボ(KaVo)社の3d eXamの導入を決めました。
広範囲のEFOV撮影では、矯正治療に必要な3次元の情報も十分に得られるので、これ一台で臨床のすべてをまかなうことができます。
パルス照射により、必要な量の照射をコントロールできると同時に、コリメーターというフィルターにより、不必要な部位への被爆を制限することもできます。インプラントの診断のみならず、歯周治療や歯内療法、埋伏歯などの外科処置、矯正治療に威力を発揮すると思います。

従来の2次元のレントゲンでもある程度、診断はできました。しかし、3次元の情報が得られる事で、より正確な診断が可能となり、治療の効率や確実性に大いに寄与できると確信します。

歯科用CTとは

 CT(Computer Tomography)は、断層レントゲン写真を撮影し、3次元の情報に再構成する技術です。医科では、CTとMRIは診断上、非常に重要な役割を担っています。
医科用CTの撮影法は、ファンビーム方式といい、横たわった状態で、レントゲン照射器が螺旋状に旋回して、撮影します。同じ部位近くを何度も照射することになり、被爆線量がやや多く、一回の頭部CT撮影で、約2mSv(ミリシーベルト)の被爆になります。これに対して、歯科用CTは、コーンビーム方式といい、顔の周りを装置が一周する間に情報を取る方式で、被爆線量は、医科に比べて、1/8~1/50で低被爆なのが特徴です。

医科用CTと比べた歯科用CTの特徴

長 所
・装置がコンパクトで安価
・被曝量が少ない
・高画質である
・金属アーチファクト(画像の金属による乱れ)が少ない
・短時間で3次元画像を構築できる
・座った状態で撮影できる
短 所
・軟組織の変化は反映されにくい
・撮影範囲が狭く、限定的である
・歯科では一部が保険適用である
・CT値が出にくい

CT撮影法の違い

 同じコーンビームCTでも撮影時のレントゲンの照射法の違いにより被爆線量に差が出ます。
●連続照射:180°もしくは360°回転する間、連続してレントゲンが照射されている機器で、相対的に被爆線量が多くなります。

●パルス照射:ができます。
低価格のCTは、この部分に費用をかけていないので安価にできるという情報を得ています。

CT値

 医科用CTでは、骨密度が表現されています。これは、水を0、空気を-1000として、直線的に密度がレントゲンの濃淡として表示されるようになっているからです。このことをCT値(ハンスフィールド値)が出ていると言います。
歯科用CTでは、CT値の出ている機種は限られています。つまり、画像の濃淡が密度を反映していないわけです。歯科用CTでCT値が出ている機種は、カボ社、GENDEX、iCat、GCProma、AUGE SOROの5機種に限られるようです。
インプラントの植立では、骨密度を知ることが役にたつと私は思っています。医科用CTを分析してきた経験では、この情報は非常にありがたいと思いました。従って、機種選定では、CT値が出る歯科用CTに絞られることになります。

金属アーチファクト(金属によるレントゲンのハレーション)

 医科用CTでは、同じ場所付近を何度も照射するため、金属に反射したレントゲンにより画像に激しいノイズが出ます。これを金属アーチファクトと言いますが、口の中に金属の修復物があると、その周辺が乱れてよくわかりません。健康な天然歯の場合は、どのメーカーでも奇麗なCT像になりますが、金属修復が多い人は、ほとんど細かい部分が見えない画像になります。歯科用CTの方が撮影方法の違いで金属アーチファクトは出にくいのですが、それでも、これをいかに少なくできるかが画像診断の精度を上げるためには必須です。
各社とも金属アーチファクトを減らすソフトを開発して、画像を見やすくする努力をしていますが、この金属アーチファクト除去機能が一番優れているのは、iCat社のGIDORAというソフトウェアです。これは特筆に値しますね。
金属アーチファクトによる画像への影響とGIDORA再構成
iCatのRevoluXとGENDEXは、このソフト内蔵で、画質は優れています。あと、KaVo社の3d eXamも、GIDORAと併用することが可能で、オリジナルの画像よりもGIDORAで読み込んだ画像の方が精度が高くなるのです。

各種レントゲン被爆の比較

デジタルレントゲン1枚撮影  1~5μSv/回
胸部レントゲン撮影 50μSv/回
デジタル14枚法撮影 14~70μSv/回
原発除染基準  1000μSv
(1mSv)以下/年間
人の自然年間被爆量 2400μSv
(2.4mSv)
胃レントゲン検査  8000μSv
(8mSv)/回
福島原発帰還基準  20mSv/年間
緊急時における 放射線業務従事者の許容線量 100mSv
デジタルパノラマ撮影  40μSv/回
ニューヨークまでの往復 200μSv
腹部レントゲン撮影 400μSv/回
頭部CT撮影  2000μSv
(2mSv)/回
PET 4000μSv
(4mSv)/回
胸部CT撮影  10000μSv
(10mSv)/回
放射線業務従事者  50mSv/年間

以下の情報から、歯科用CT撮影1回の被爆レベルは、胸部レントゲン撮影~腹部レントゲン撮影1回分にほぼ相当することがわかります。

各社機種の比較

※被爆線量のデータは、2007年です。

(1)KaVo(3D eXam)←当医院に導入決定した機種です!

パルス照射で低被爆、CT値もある程度出ており、矯正を含む治療全般に対応可能。GIDORA搭載可能で、金属アーチファクトに強い。

KaVo(3D eXam)
KaVo(3D eXam)

被爆量  69~110.5μSv(パルス照射)
撮影範囲 最 大 H130mm×φ160mm
(EFOVモード H170mm×φ230mm)
最大解像度 0.125mm
撮影時間  4.8秒~26.9秒(360°)


(2)シロナ(ガレリオス)

被爆線量は少ない機種ですが、導入医院の画質の評判が今一でした。CT値が出ていないのが選択できない理由です。

シロナ(ガレリオス)
Kaシロナ(ガレリオス)

被爆量  16~90μSv(平均75μSv)(パルス照射)
撮影範囲 最 大 φ150mm
最大解像度 0.15mm
撮影時間  14秒(204°)


(3)GENDEX

GIDORA標準搭載で、金属アーチファクトに強い。KaVoと同じメーカーですが撮影範囲が狭く、全体が見られません。
CT値は出ているのですが。

GENDEX
GENDEX

被爆量  20~50μSv(パルス照射)
撮影範囲 最 大 H85mm×φ85mm
最大解像度 0.125mm
撮影時間  4.8秒~23秒(360°)


(4)iCat

同じく撮影範囲が限られていることと、連続照射であることが欠点です。CT値が出ているだけに惜しいです。
ただし、GIDORA標準搭載で、金属アーチファクトに強いです。コストパフォーマンスはもっとも優れてます。

iCat
iCat

被爆量  125μSv(連続照射)
撮影範囲 φ80mm×85mm
最大解像度 0.16mm
撮影時間  19秒(360°)


(5)MORITA(3DX)

撮影範囲が限定的なことと、連続照射、大きな設置スペースが必要です。

MORITA(3DX)
MORITA(3DX)

被爆量  101.5μSv(連続照射)
撮影範囲 φ80mm×80mm
最大解像度 0.08mm
撮影時間  17秒(360°)


(6)ヨシダ(Finecube)

撮影範囲が限定されている、連続照射で被爆が多い

ヨシダ(Finecube)
ヨシダ(Finecube)

被爆量  189~388μSv(連続照射)
撮影範囲 φ81mm×75mm
最大解像度 -
撮影時間  37秒


(7)GC(Promax 3D)

連続照射で被爆線量が多いのが問題でした

GC(Promax 3D)
GC(Promax 3D)

被爆量  488~652μSv(連続照射)
撮影範囲 最 大 φ160mm×110mm
最大解像度 0.16mm
撮影時間  18秒(194°)


(8)RF(NAOMI)

一番安価ですが、連続照射です。その割に被爆線量は少ない機種のようです。
レントゲン室のないところでもそのままオールインワンで設置できる強みがありますが、既存のレントゲン室に設置するには融通が効かないのが問題です。
また、CT値が出ていないのが残念です。

RF(NAOMI)
RF(NAOMI)

被爆量  ※ 84.3μSv(連続照射)
撮影範囲 最 大 φ160mm×(68~83)mm
最大解像度 0.068mm
撮影時間  15秒(360°)

※ICRP2007 publication103のCTDIvolに順じ
84kV4mAの条件でRF社が独自に測定した数値


(9)朝日レントゲン(AUGE SORO)

被爆線量は不明。連続照射のはずなので少なくはないと思われます。
CT値は出る機種なので、画像はほぼ十分なレベルですが、サーバー、クライアントともにPCを指定されるので、ネットワークのコストがかかる。

朝日レントゲン(AUGE SORO)
朝日レントゲン(AUGE SORO)

被爆量  不 明(連続照射なので少なくはない)
撮影範囲 最 大 φ161×100mm
最大解像度 0.1mm~0.315mm
撮影時間  17秒(360°)

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