茨城県つくば市手代木にある歯科医院です
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院長コラム・Vol.12
つくばヘルスケア歯科クリニック
院長・千ヶ崎 乙文書き下ろしコラムです
歯科医療に関する情報をご紹介します

院長コラム Vol.12 2018年 2月 1日

歯科心身症という病気をご存知ですか?

「歯科心身症」聞き慣れないこの言葉は、最近、認識されてきました。

・口の中で原因が特定できない違和感や冷水痛、温水痛を訴えて、どこへ行っても問題ないと言われ治らない。
・何かの治療に伴って感染などがないのに急に痛みを訴える。
・仮歯にしたとたん、苦しくて我慢できなくなり、外してほしいと訴える。
・歯には異常が見られないのに、舌がヒリヒリして痛みが強く、生活に支障が出ている。
・根の治療をした歯の痛みがずっと取れない、何度も治療している。
・口臭が気になってしょうがない。
・フロスや歯間ブラシをしたとき、特定の歯の周囲の臭いが気になって、改善しない。
・症状が改善しないので、歯医者を変えて渡り歩いても、どこへ行っても診断ができず、症状が執拗に続く。

当人も痛みや違和感に対する不安もありますし、治療する側からしても、大変対応に苦慮することがあります。

「最初は良かったと思ってましたが、やっぱり噛むと変な感じがしました」
「仮歯をはめると、きちっと内側に入り込むような感じ。横の幅が足りなかったり、高さが足りない。前のようにしてもらえないでしょうか?」
「薬を飲むと、歯のことは忘れるのは忘れるのですが…」
「元の咬み合わせに戻したら、身体の具合も良くなると思います」
「どこで咬んでいいかわからない」
「あのとき、この歯をこうしてから悪くなったから、この歯を治療し直せば良くなると思う」
「治療したら、かえって悪くなりました」

もちろん、まず前提として、歯や粘膜に疾患がないか、それが治っている状態、問題が無い状態だと客観的に言えることが大事です。
しかし、器質的変化(虫歯、歯周病、根の感染、粘膜の感染など)の原因でのみ解決を図ろうとしても、症状が拡大したり、固定してしまったり、より増悪し、治療がますます困難になることだってあります。

こんなことでお困りのケースは、ひょっとすると、お口の中の歯や粘膜の病気が原因ではないかもしれません。

これらの症状は場合によっては、

・舌痛症
・口腔異常感症
・顎関節症
・非定型型顔面痛
・歯科恐怖症
・口臭(恐怖)症(自己臭恐怖)

など、歯科(口腔)心身症と分類される病気です。

このような症状は、大きく分けて二つの原因が考えられます。

(1)大脳皮質連合野における高次認知過程での誤った関連づけ
癌ではないか、この薬が原因だ、この歯を削ったら良くなるはず、あの治療が間違いだったなど、本人が思い込んで間違った関連づけをしていることがくるもの

(2)三叉神経から上向する神経伝達物質と受容体の生化学的異常
口の中の知覚神経である三叉神経からの信号が脳に伝わる過程で異常信号を発することによって疼痛、違和感、咬合の異常感、顎関節痛等を感じるもの

(1)のケースでは、思い込みをなくすようなカウンセリング(心理療法)が必要と言われています。
(2)のケースでは、末梢性神経障害性疼痛と呼ばれ、薬物療法が有効と言われます。

※図は、後述、豊福 明先生のスライドから転載しました
(図は、後述、豊福 明先生のスライドから転載しました)

ここで重要なことは、これらの疾患を有するとしても、精神医学的なうつ病とは異なることが多いことです。
一部には背景にうつ病があり、それが口腔の症状として認知されて症状がひどくなるケースもあるでしょう(仮面うつ病と言います)。

心理療法が必要な場合は別として、末梢性神経障害性疼痛には、三環系抗うつ薬であるトリプタノールの投与が有効とされています。歯科でもこの薬は適応が認可されました。歯科でうつ病の薬を飲むということの抵抗感は強いと思われますが、一時的な投与によって、症状が寛解するケースも多いようです。

繰り返しますが、この疾患は、精神的なものではなく「特殊な神経痛のようなもの」で「感覚神経内で“電話回線の混線”が起こっている」状態で、特定の性格や特殊な人が罹る病気ではないということを理解することが大切です。慢性疼痛の治療薬として抗うつ剤が一時的に有効であると言われているのです。

ただし、抗うつ薬の投与には、飲み合わせや副作用など十分な注意が必要です。また、大脳の関連付けが影響しているケースでは投薬のみで治すことは出来ない可能性もあります。できれば専門家に診てもらうことが早道です。

こういった症状でお困りのケースでは
東京医科歯科大学歯学部付属病院 医歯学総合研究科 歯科心身医療外来 豊福 明 先生の診査、診断、治療を受けられることをお勧めします。

当クリニックは、東京医科歯科大学歯学部付属病院と医療連携しておりますので、紹介状など、ご相談いただけます。

※この文章のほとんどは
東京医科歯科大学歯学部付属病院 医歯学総合研究科 歯科心身医療外来 豊福 明 先生が現在WEB上に公開されているスライド「歯科心身症の診断と治療」から抜粋させていただいています。

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